コラム 2024.06


季節を味わう 文章:塚口紗希


 「ショートケーキといえば、いちご」を、長く続け、期待に応えて喜んでいただけるように、この時期は北海道や長野県から夏いちごを取り寄せてきました。品種改良や栽培方法が進歩し、昔と比べるとおいしい夏のいちごが手に入るようになりましたが、やはり冬から春の旬の香り、味、食感、美しさにはかないません。


 夏いちごの使用を継続するかどうか、ずいぶんと長い時間をかけてメンバー皆で話し合ってきました。やはり旬の美味しいフルーツを使ったお菓子をお客様に食べていただきたいということになり、ケーキの飾りやサンドのいちごは、旬のフルーツに変わります。ご理解いただけましたら幸いです。


 3年前、サントアンメンバー全員が集まって行った会議では、私たちのよりよいお菓子づくりとは「旬の手作りのもの」としました。おいしいことを大前提として、良い食品であるかどうかも大切にしています。良い食品とは、環境に負荷を与えない、生産者と消費者にとって有益で、自然のように循環して持続可能であること。人の命を養う食品をできるかぎり自分たちの手で加工して販売しようと決めました。


そして、よりよいお菓子づくりをとおして、作る人と食べる人の感性や美意識、日本と地域、食と菓子の文化を育む一助になりたいとも願っています。


 お菓子の素材、庭先の花木や店のしつらえなどを少しずつ変えながら季節の移ろいをお客様にお知らせし、味わって、喜んでもらうことが私たちの喜び=仕事です。


 作る人と食べる人が相互に生み出す喜びが、アイデンティティ(自分が自分であること、さらにそうした自分が他者からも認められている感覚)を作り、人を幸せにする力と自ら幸せになる力を育ててくれると信じています。


 作り手は、日本の気候風土が育む旬のフルーツで工夫を凝らしてお菓子を作ります。一緒に移ろう季節を味わい、楽しんでまいりましょう。