「当たり前に感じている幸せを」
丸島 さん(サントアン販売員)
「小さいながらの記憶でサントアンのお庭で遊んだ覚えあるなとか」
三田出身の丸島さんには、記憶の中にもサントアンがある。製菓学校在学中、サントアンの求人募集を「たまたま見つけて、ぱって迷いなく、学校の先生に“ここ行きたいです”って言って」。先生もいいところだからと推してくれた。就活担当者のアドバイスは、“もっと色んなところを見てきた方がいい”。それでも「他のところを見ないでも、ここがいいって直感ですごい思って」。
直感や、ご縁を信じてる。「どの道に行っても結局何かしら後悔するなら、その時自分が選んだ道でいいかなって。その時選んだ道はその時自分が感じて思ってやったことで、後から後悔してもその時の自分がそうなんだから、いいかって思って、ここまで来ました」。
そう思えるようになったのは、紆余曲折。深く悩んだ時期もあるから。
丸島望さんは、パティシエとして入社し、現在は販売員として働いている。パティシエを目指す前は、保育や教育の道に進みたかった。「小さい時のことって曖昧になるけど、ちょっとでも思い出した時にその思い出に携われる、思い出を一緒に作れる先生になりたいと思って」。それが、保育科に進んだ高校で壁にぶつかる。自分が渦中にいなくても、教室にぐしゃぐしゃと関係のもつれがあることが辛い。それが教育者を目指すクラスで起こっていることも辛い。高校を辞めたいとも思った。
「本当に学校に行きたくなくて、すごく心も沈んじゃって」。
沈む心を励ますため、幼稚園から一緒の、同じ高校に通う友達と交わしてきたことがある。「毎日、人の名言を書いて、お互いに渡すということをして。朝それを見て、あ、こういう言葉あるんだ、って。名言とか人の言葉をすごく漁って自分に言い聞かせて。そこでいろんな言葉と考え方を知って。その時は辛かったけど、それがなかったら今の考えはできていないのかなぁ、と」。当時、必死で見つけた言葉や、親や友人と話し、かけてもらった言葉が、丸島さんを支え、変えてくれた。
今も響いている言葉のひとつは、『置かれた場所で咲きなさい』。「咲けなくても、雨が降っても、その時は咲けなくてもいいから、下に根を伸ばせばいい、って。就職してから今もずっと思ってて、どんな場所でも咲く。咲けなくても、咲く努力はしたいなぁ、何か人のためになればなって思って、やっています」。
高校卒業後は、新しい道に製菓を選択。「年齢関係なくいろんな人の思い出に携われて、喜ばせられてっていうのはパティシエだなって」。その道が、サントアンまで繋がった。
サントアンでは、環境が合うか判断するため、内定前の現場研修がある。その期間中、丸島さんには接するスタッフたちが皆温かく感じられた。最終日、「来年一緒に働けるの待ってるわ」不意にかけられた言葉が嬉しかった。「素敵やなぁ。ここやなぁ、って」。
翌年、2023年春、製造スタッフとして入社。調理場に入る前に、まずは4ヶ月の販売研修。カウンターに立ち、お客様と接してきた。ところがその後、いよいよ製造部門に移ると体調を崩し、お休みをもらうことに。
「自分の本当にしたいことは何かな」。自問自答する中、販売研修期間中にも感じてきた自分の気持ちに触れる。“接客が楽しい、していきたい“。4ヶ月店頭に立つ中で、お客様からいただいた言葉も響いていた。
それは、サントアン宛の1通のメールにあった言葉。メールには、THE LETTER内の社長のエッセイへのご感想に加え、お客様がご来店の際に受けられた丸島さんの接客に向け、温かなメッセージがあった。丸島さんの接客によって、その日一日、温かく優しい感情を持つことができた。そう綴られていた。「すっごい嬉しくて、お客様のその1通のメールがすごい響いて、何かが変わって」。
販売への転向希望を申し出るのは勇気がいった。けれど、休み明け出社すると、「大丈夫!なんでも言ってな!」そう迎えてくれた販売チームがいた。社長と話し、すぐに販売への転向が決定。スムーズに決まったのは丸島さんだったから。販売研修期間中、スタッフもまた、丸島さんの接客や人柄を見てきた。「今働けてるのは、本当に周りのおかげやなって」。今、楽しく働けている環境。壁なく、助けあえる環境は当たり前じゃない。「みなさんが私のことを受け入れてくださっているからこそ。周りに感謝やなってすごい思います」。
そして大きかったのは、メールでいただいたお客様の言葉。もしお客様が今も来られているのなら、御礼を伝えたい。「救われたメールです」。あの時、あの言葉をいただけたからこそ。そう思う。
言葉を受け、言葉に救われてきた丸島さんもまた、今、仕事の中で、言葉を伝える役目をしている。
「お客様から、あのケーキが美味しかったのって言われると、製造のことを知っているからこそ、余計に自分のことように嬉しくて」。ケーキを作った製造スタッフに、必ずお客様からの声を伝える。生産者がいて、製造スタッフがいて、ギフトを作るスタッフがいて…その繋がりをお客様に手渡すのが販売員。また、お客様からいただいた言葉や反応をうしろに伝達できるのも、販売員。「お客様がまた来たいと思えるのは、販売の最後の役目。この繋がりをちゃんと大事にして、製造に“こうだったよ”とちゃんと伝えて、間に立てるのは、製造も販売も経験してる私の役目なのかなと思ってて。この繋がりを大事にしてます。作ってる時はお客様の顔もだけど声も聞こえない。お客様が何が嬉しかったか、それを伝えるのは、すごい大事」。あなたの仕事は喜ばれていると、橋を繋ぐ人に。
入社2年目の今年。目標を聞くと、販売の中でできることを増やしたいという思いとあわせ、こんな答えがあった。「その日、当たり前に感じてる幸せを見つけようって思って。幸せって求めて頑張るものでもなく、見つければ見つけるほど、当たり前に感じていることが幸せ。今置かれている環境での幸せをちゃんと見つけようって決めました」。
咲けない時も、しっかりと根を伸ばしてきた人。開いていく花が、周囲をきっと明るくする。
取材・文章 西 尚美
インタビュー日/2024.04.15